米国特許法散策(1)35 U.S.C. § 271(e)(1) セーフハーバー/試験目的での使用

本文中に引用されている米国の判例を、埋め込んでみました。いちいち判例を探す手間が省かれるかもしれません。

35 U.S.C. § 271(e)(1) 「セーフハーバー」条項.docx
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セーフハーバー/試験目的での使用

 

           35 U.S.C. § 271(e)(1) は「セーフハーバー」条項として知られている。

            医薬品または動物用生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する連邦法に基づく情報の開発および提出にもっぱら合理的に関連する使用のために 特許発明を作成、使用、 販売することは、侵害行為とはならないものとする。

            FDAに情報を提出するために行われる様々な「行為」を、権利侵害から除外。

            最近の諸判例は、このセーフハーバー条項の範囲内(および範囲外)に該当する活動範囲を画定するのに役立つ

 

初期のセーフハーバー判例

 

           Eli Lilly & Co. v. Medtronic, Inc., 496 U.S. 661 (1990):市販前承認を売るために医療機器をテストすることは、セーフハーバー内に該当

           Abtox, Inc. v. Exiron Corp., 122 F.3d 1019, 1027 (Fed. Cir. 1997):「活動が合理的にFDA承認に関連している限りは、[当事者の]意図または代替的な使用は、第271(e)(1) 条の適用除外を発動する地位を認めるにあたって関連しない。」

           Merck KGAA v. Integra Lifesciences I, Ltd., 545 U.S. 193 (2005):いかなる医薬品の申請も行われなかった医薬員の前臨床試験を実施するときにも、セーフハーバーは適用される。

           Proveris Scientific Corp. v. Innovasystems, Inc., 536 F.3d 1256 (Fed. Cir. 2008):規制当局への申請資料を作成するために使用される機械類の販売へのセーフハーバー抗弁を拒絶。リサーチツールまたは機器は、それ自体は規制当局の審査対象ではない。

 

 

新薬承認前に関するセーフハーバー

           Merck v. Integra (連邦最高裁判決)

            中心的な問題 「目的製品(lead product)」が存在するか?

           特許製品の使用が目的製品に関係していれば、セーフハーバーに 該当する可能性がより大きくなる

           しかし、使用が、目的製品を発見するための試行にとどまるとき は、セーフハーバーの適用対象とはならないだろう

            細胞治療の場合の指針とするには困難 どの時点で「目的製品(lead product)」が存在したのか?

 

 

新薬承認後に関するセーフハーバー判例

           Classen Immunotherapies, Inc. v. Biogen Idec, 659 F.3d 1057 (Fed. Cir. 2011).

            免疫化のスケジュールの効果を分析

            セーフハーバー抗弁を排斥:第271(e)(1)条は、「市販承認が得られたはるか後になって、

FDAに定期的に報告される情報」を収集するための行為を適用除外していない。」

           Momenta Pharmaceuticals, Inc. v. Amphastar Pharmaceuticals, Inc. (Fed. Cir. 2012) (“Momenta I”)

            商業用生産バッチの純度試験で使用

            セーフハーバー抗弁の適用:第271(e)(1)条は、新薬承認後の「FDAの承認を維持するために必要な情報提出」には、適用されない。」

            試験はFDAの個別的な要求事項を満たすために実施された

 

           Classen Immunotherapies, Inc. v. Elan Pharmaceuticals, Inc. (Fed. Cir. 2015)

            FDAに提出するための市販医薬品に関するデータの解析、当該医薬品の新たな適応の特定、適応追加申請(supplemental NDA) を行うため。

            FDAに提出する目的で、第三者の特許を実施する新薬承認申請者にセーフハーバー条項を適用。

            Elanの治験およびそのFDA提出」は、当該保護の十分な範囲とされた。Elanは、製品の添付文書を変更するためにFDAに提出する情報を開発しており、裁判所はこれを、「日常的活動」以外の何物でもないと認定した。

 

           Momenta v. Amphastar, 809 F.3d 620 (Fed. Cir. 2015) (“Momenta II”)

            Momenta I 判決にかかわらず、商業用生産バッチの純度の試験は日常的活動。

 

セーフハーバー条項の適用を否定:新薬承認後試験がセーフハーバーの範囲とされる可能性のある一方で、Amphastarの品質管理用アッセイは、生産工程の日常的な一部であって、FDA承認に関係しなていなかった。