第15回 米国議会調査局 (Congressional Research Service) の「生成AIと著作権法 (Generative Artificial Intelligence and Copyright Law)」(2023年9月29日更新)の紹介
Generative Artificial Intelligence and Copyright Law
(生成AIと著作権法)
2023年9月29日更新
人工知能(AI)におけるイノベーションは、著作者性、著作権侵害、そしてフェアユースのような著作権法の原則が、AIによって作成され又は利用されるコンテンツにいかに適用されるかについての新たな問題を提起している。いわゆる「生成AI」コンピュータプログラム-OpenAI社のDALL-E 2及びChatGPTプログラム、Stability AI社のStable Diffusionプログラム、そしてMidjourney社の同名のプログラム—は、ユーザーのテキストによるプロンプト(又は「入力」)に対応して、新たな画像、テキスト、そしてその他のコンテンツ(又は「出力」)を、生成することができる。これらの生成AIプログラムは、それらプログラムを、一部は、書き物、写真、 絵画、そしてその他の芸術作品のような、既存の大量な著作物に曝露することによって、訓練される。本 Legal Sidebar(米国連邦議会立法内部資料)は、生成プログラムの出力が、著作権上の保護を受 ける資格があるのかの点を、また、生成AIが、いかにして第三者の著作物の著作権を侵害することになりうるのかの点について、裁判所及び米国著作権局が直面し はじめて問題を検討するものである。
生成AIを用いて創作された作品の著を作権
生成AIプログラムの利用の普及は、仮に誰かがもつとして、誰が、これらのプログラムを用いて創作されたコンテンツについての著作権もつのかという疑問を提起している。
AI出力は著作権の保護を享受するのか?
AI出力-DALL-Eにより作成された画像又はChatGPTにより作成されるテキストのような—には、著作権保護を与えることができるか否かについての疑問の解答は、少なくとも一部は、「著作者性(authorship)」という概念に依存しているようである。米国連邦憲法は、連邦議会に対して「著作者に対しその...著作物に対する排他的な権利を、制限された期間、確保する」権限を与えることを認めている。この権限にもとづき、米国著作権法は、「著作者の創造的な作品」に対して著作権による保護を与えている。米国連邦憲法及び米国著作権法も、誰が(又は何が)「著作者」になれるかを、明示的には定義していないが、米国著作権局は、「人間が創作した作品」についてののみ著作権を承認している。裁判所は、同様に、著作権による保護を人間以外の著作者にまで著作権による保護を拡げることを拒んでいる。つまり、一連の写真を撮影したサルは、米国著作権法の下での当事者適格を欠くと、天上の存在からインスピレーションを受けたと称する書籍を著作権の対象とするためには、人間の何らかの創造性が必要であること、そして人間の著作者を欠くために、植物の庭園は著作権による保護対象となることはできないと判示している。
最近のある訴訟では、AIによって「著作」されたと称する作品の文脈で、人間の著作者の要件が攻撃された。2022年6月、Stephen Thaler は、Creativity Machineと呼ばれるAIプログラムによ「自律的に」著作されたと彼が主張する、ビジュアル・アートワークの著作権登録請求を拒絶したことを理由に、米国著作権局を訴えた。Thaler 博士は、人間の著作者性は、米国著作権法によって要求されないと主張した。2023年8月18日、連邦地区裁判所は、米国著作権局を勝訴させる、請求原因不充足のサマリ・ジャッジメントを下した。同裁判所は、「人間の著作者性は、有効な著作権登録請求の不可欠の要素である」と判示し、その理由として、人間の著作者だけが、著作物の創作のインセンティブとして、著作権を必要とすると述べている。Thaler 博士は、この判決に対して控訴する計画であると述べている。
著作権で保護される著作物には人間の著作者を必要とすることを前提とすると、人間が生成AIを利用して作品を創作した場合には、当該創作プロセスへの人間の関与の性質にもよるが、著作権保護を受ける資格がありうるかもしれない。しかしながら、最近の著作権登録手続及びその後の著作権登録ガイダンスは、テキストのプロンプトに応答して、AIプログラムが作品を生成した場合に、米国著作権局は、必要な人間の著作者性を認定することはありそうにないことを示している。2022年9月に、Kris Kashtanovaは、テキスト入力に応答してMidjourneyが生成された画像のイラストレーション付きのグラフィック小説について著作権を登録した。2022年10月に、米国著作権局は、Kashtanovaが、AIを使用したことを開示していなかったと述べ、取消手続を開始した。Kashtanovaは、「創造的な、イタレーティブなプロセス」により画像を創作したと主張する反論を行った。しかしながら、2023年2月21日に、米国著作権局は、Kashtanovaではなく、Midjourneyが当該「ビジュアル作品」を著作したと認定して、当該画像は著作権保護の対象とならないと決定した。2023年3月に、米国著作権局は、AIが「その出力の表現的な要素を決定しているときは、生成された作品は人間の著作性のある製品ではない」と述べるガイダンスを発表した。
いく人かの論者は、AIプログラムは、著作権により保護された作品を制作するために人類がこれまで使用してきた他のツールと同類のものであると主張して、AIにより生成された作品は、著作権による保護を受けるべきであると主張している。例えば、合衆国連邦最高裁判所は、1884年の判例 Burrow-Giles Lithographic Co. v. Sarony 以来、写真は、構成、配置、そして明暗のような創造的要素に関する意思決定を、写真家が行っている場合は、著作権による保護を求める資格を有すると判示している。生成AIプログラムは、Kashtanovaが主張していたように、カメラに似たもう一つのツールと見なしうるかもしれない。
その他の論者と米国著作権局は、写真のアナロジーを否定して、そして単なるツールと見なすために、AIのユーザーがAIに対して創造的な制御を行使したかを争っている。Kashtanova事件で、米国著作権局は、「Kashtanovaが所望する[その]画像に到達するために制御及び誘導されるツールでなく、Midjourneyは予見できない方法で画像を生成している」と理由付けている。米国著作権局は、むしろ、AIのユーザーを、何らかのものを制作させるために「アーティストを雇い」そして「一般的指示しかしないクライアント」に対比した。米国著作権局の2023年3月のガイダンスは、同様に、「ユーザーは、[現在の生成AI]システムに対して、いかにプロンプトを解釈するか、そして作品を生成させるかについて、ユーザーは究極的な創造的制御を行使していない」と主張している」。他方で、Kashtanova側の弁護士の一人は、ある種の写真とかビジュアル・アートは、一定程度の偶然性を組み込んでいることに注目して、米国著作権法は、かかる厳格な創造的制御を要求していないと論じている。
いく人かの論者は、米国著作権法の採用する、著作権の保護を受ける「作品」と著作権の保護を受けない「アイデア」との区別は、著作権によりAI生成作品を保護すべきで無い、もう一つの理由を提供すると主張する。ある法学教授は、-例えば「浜辺でお茶会を開いているハリネズミ」の絵を描くようDALL-Eに求めるように-AIプログラムにテキストのプロンプトを入力する人間のユーザーは、最終的な制作物に対する「アイデア以上の何者も提供していない」ことを示唆している。この主張に沿えば、出力の画像は人間の著作者を欠き、著作権による保護を受けられない。
現時点までの米国著作権局の処分は、AIで生成された作品について著作権による保護を受けることは困難となることを指し示している一方で、この問題は決着がついていない。著作物の登録申請者は、登録を拒絶した米国著作権局の最終処分の決定に異議を唱えて、米国連邦地方裁判所に訴訟を提起して(ちょうで、Thaler博士がそうしたように)、AIにより生成された作品が著作権の保護を受けられるか否かに関して、連邦裁判所がどのような判断を示すかを見守らなければならない。米国著作権局は、裁判所が、米国著作権局の経験と専門的知識をときとして尊重する一方で、裁判所は、米国著作権局の米国著作権法による解釈を、必ずしも採用するわけではないことも注意を喚起している。
さらに、米国著作権局のガイダンスは、AIによって生成された作品、またはAIによって生成された作品と人間が著作した作品を統合した作品に対する「十分に創造的な」人間によるアレンジや変更があるような、いくつかの状況のもとでは、AIにより生成された作品を「含む」作品が、著作権による保護を受けられることがあることを承認している。米国著作権局は、かかる作品に対する「自らの貢献部分についてのみ、著作者は著作権による保護を主張できるのみであり、著作権の登録を申請する場合には、当該作品のAIによって生成された部分を特定し、そして著作権放棄をしなければならないと述べている。2023年9月には、例えば、米国著作権局再審査委員会は、米国著作権局による、Midjourneyにより生成された芸術作品の著作権登録の拒絶処分を是認し、申請者がAIによって生成された作品について著作権放棄をしていなかったため、申請者による登録申請を、様々な点で変更した。
生成AIの出力に対する著作権は誰が保有するのか?
いくつかのAIにより作成された著作物が著作権による保護を受ける資格があることを前提とすると、誰がその著作権を保有するのであろうか?一般的に言うと、米国著作権法は、「著作物の著作者一名または複数名に、当初、」権利を帰属させている。しかしながら、現在に至るまで、AIにより生成された著作権を承認する裁判所又は米国著作権局の決定が無いことを前提とすると、これらの著作物の「著作者一名又は複数名」とは誰となるかを特定できるような明確な規則は生み出されていない。写真の例え話に戻ると、AIの作成者はカメラメーカーに例えることがで、特定の著作物の作成を命じる、AIのユーザーは、特定の画像を撮影するためのカメラを使用する撮影者に例えることができるかもしれない。この見解では、AIのユーザーは著作者と考えられ、そして、したがって、当初の著作権者をなるかもしれない。他方で、AIのコーディングと訓練に関わる創造的な選択は、AIの作成者に、カメラのメーカーよりもより強力な、なんらかの方式の著作者性を主張する根拠を与えるかもしれない。
AIソフトウェアを提供する会社は、同会社のサービス規定のような契約によって、同社とそのユーザーとの間で、それぞれの権利の帰属の割り当てを図るかもしれない。
例えば、OpenAI社の利用規約は、あらゆる著作権をユーザー に譲渡しているように見える:「OpenAI社は、ここに、ユーザーに対して、出力についての及び 対するあらゆる権利、権原及び権益を譲渡する。」対照的に、同利用規約の旧版では、OpenAI社 にかかる権利を与える体裁となっていた。ある学者がコメントしているよう に、OpenAI社は、「契約によって著作権上のほとんどの問題を回避」しているように見える。
生成AIによる著作権侵害
生成AIは、また著作権侵害に関する問題も提起している。論者によれば、そして裁判所は、AIを訓練するために既存の著作物のコピーを作成し、または既存の著作物に類似する出力を生成することによって、生成AIプログラムが既存の著作物の著作権を侵害することがあるかを取り上げ始めている。
AIの訓練プロセスが他人の著作物の著作権を侵害することがあるか?
AIシステムは、プログラムを大量のデータに曝露することにより、インターネットで取得されるテキスト及び画像のような既存の著作物から構成される、文学的、視覚的、そしてその他の芸術的著作物を制作するために「訓練」される。この訓練プロセスは、既存の著作物のデジタルコピーの作成にかかわることがあり、著作権侵害のリスクを伴う。米国特許商標庁が解説しているとおり、このプロセスは、「著作物全体またはそれらの多大な一部の複製に、ほとんど定義上当然にかかわることになろう」。例えば、OpenAI社は、そのプログラムが「著作権により保護された著作物を含む、大規模で、公開されているデータセット」で訓練されること、そしてこのプロセスは「分析対象のデータの複製を先ず作成することにかかわること」を承認している(もっとも、同社は、将来の画像生成モデルの訓練から、ある画像を排除するオプションをいまや提供している)。かかる複製の創作は、様々な著作権者の明示的又は黙示的な許可が無い場合には、それらの著作物の複製を作成することを禁止する著作権者の権利を侵害する可能性がある。
AI企業は、それらの行っている訓練プロセスはフェアユースを構成し、したがって、権利を侵害していないと主張するかもしれない。複製行為がフェアユースとみなされるか否かは、米国法典集第17巻第107条にもとづく制定法上の要件に依存する。
1.その使用が営利的な性質のものであるか、又は非営利の教育目的であるかを含む、かかる使用の目的及び性格、
2.著作権により保護される著作物の性質、
3.著作権により保護された著作物全体に対する使用された部分の量及び重要性、及び
4.著作権により保護された著作物の潜在的な市場又は価値に対する使用の影響。
利害関係者のいく人かは、AIプログラムを訓練するための著作権により保護された著作物の使用は、これらの要件にもとづくフェアユースを見なされるべきであると主張する。第1の要件に関しては、OpenAI社は、その目的が「再現的 (expressive)」と対立する意味での「換骨奪胎的(transformative)」なものであると主張する。なぜなら、訓練プロセスは「有用な生成AIシステム」を作成するものであるから。OpenAI社は、また、第3の要件は、複製が一般公衆に提供されるものではなく、プログラムを訓練するためにのみ使用されることから、フェアユースであることを支持すると論ずる。この議論を支持する根拠として、OpenAI社は、The Authors Guild, Inc. v. Google, Inc.事件を引用する。この事件において、米国第二巡回区連邦控訴裁判所は、書籍の抜粋を表示する検索可能なデータベースを作成するために、Googleが書籍全体を複製したことはフェアユースを構成すると判示した。
フェアユースの第4の要件に関しては、いくつかの生成AIアプリケーションに、著作権により保護された著作物上でAIプログラムを訓練することを許せば、元来の著作物と競合する著作物を、生成AIアプリケーションに生成させることを許してしまうという懸念を生じさせた。例えば、あるAIによって生成された「Heart on My Sleeve」と呼ばれる歌曲は、アーティストDrakeとThe Weekndの楽曲に似た曲を奏でるように制作されており、様々なストリーミング配信サービスから削除される前の2023年4月には何百万回も再生されていた。Universal Music Groupは、両アーティストの著作物を取り扱っていたが、AI企業は、これらのアーティストの楽曲を訓練データで利用することにより著作権法に違反したと主張している。OpenAI社は、そのビジュアルアートプログラムDALL-E 3が「生存中のアーティストの作風の画像を要求するリクエストを拒絶するように設計されていると述べている。
原告等は、AIプログラムの訓練プロセスは、原告等の記述および視覚的な作品における彼らの権利を侵害していると主張する複数の訴訟を提起している。
これらの訴訟には、次の訴訟が含まれる:OpenAI 社を相手取って全米作家協会、ならびに作家であるPaul Tremblay、Michael Chabon、Sarah Silverman、およびその他が提起したもの、Meta Platforms社を相手取って、Michael Chabon、Sarah Silverman、およびその他により提起された別の訴訟、Alphabet Inc、Stability AI社およびMidjourney社に対するクラスアクションの申立、そしてGetty Images社によるStability AI社を相手方とする訴訟である。Getty Images社の訴訟では、例えば、「Stability AI社は、Stable Diffusion というモデルを訓練するために、Getty Images社のウェブサイトから、少なくとも1200万枚の著作権保護対象の画像を複写・複製している」と主張されている。この訴訟では、Stable Diffusion は商用製品であると主張して、制定法上の第1の要件にもとづくフェアユースの成立を争い、また同プログラムが、元来の著作物の市場を毀損していることから、第4の要件にもとづくフェアユースとしての使用を争って、フェアユースとして認定される性格付けを争っているように見える。
2023年9月、連邦地区裁判所は、AIが、法律意見の関連する部分を引用して、ユーザーからの質問に答えられるようにするため、AIプログラムを訓練する目的で、AI企業が、リーガルリサーチサービスであるWestlawの判例の要約を複写・複製することが、フェアユースであったかを決定するために、陪審員による事実審が必要であったと判示した。同裁判所は、被告の使用が、「疑いもなく商用」であったが、その使用が「換骨奪胎的(transformative)」であったか(第1の要件)、原告の著作物が、いかなる程度、フェアユースに適するものであったか(第2の要件)、被告はそのAIプログラムを訓練するため必要な以上に複写・複製したか(第3の要件)、そしてそのAIプログラムが、Westlawの「代替材」とみなすことができたかに関する事実の争いを解決するために、陪審による審理が必要であったと認定した。本件のAIプログラムは「生成」AIとはみなされないかもしれないが、裁判所が、生成AIモジュールを訓練するために複写・複製を行う際のフェアユース分析において、同種の事実は関連性を有するとされるかもしれない。
AI出力は第三者の著作物の著作権を侵害することがあるか?
AIプログラムは、また、既存の著作物に類似する出力を生成することによって、著作権を侵害するかもしれない。米国の判例法では、著作権者は、AIプログラムが、(1)著作権者の著作物にアクセスしたこと、且つ、(2)「本質的に類似する」出力を制作した場合には、かかる出力がその著作権を侵害していると立証できる可能性がある。
第一に、著作権の侵害を証明するためには、原告は、侵害者が元来の著作物を「実際に複製したこと」を証明しなければならない。これは、ときには、侵害者が「著作物にアクセスした」という状況証拠によって証明される。AI出力については、アクセスの有無は、AIプログラムが元来の著作物を使って訓練されたという証拠によって証明できるかもしれない。例えば、元来の著作物が、AIプログラムを訓練するためダウンロードされていたり又は「スクレイプ」される、公開されているアクセス可能なインターネットサイトの一部であったかもしれない。
第二に、侵害を立証するためには、原告は、新たな著作物が元来の著作物と「本質的12に類似する」ことを証明しなければならない。本質的類似性テストは、定義するのが困難であり、米国裁判所ごとに異なっている。裁判所は、このテストでは、例えば、その著作物には「本質的に類似する全体的なコンセプト及びフィール”」があったとか、又は「全体的なルック・アンド・フィール」があったとか、又は「通常の合理的な人であったなら二つの著作物を区別することができなかったであろう」ことを要求するものとして様々に説明してきた。代表的な判例では、また、原告の著作物全体との関係で、この決定は、複製された部分の「質的及び量的な重要性」の両者を考慮して行われると述べられている。AI生成出力については、伝統的な著作物に劣らず、lpの「本質的類似性」分析は、裁判所にAI出力と元来の著作物との間のこの種の比較を行うよう求めることがある。
生成AIプログラムが、その出力で既存の著作物を複製している程度を図るに当たっては、大きな見解の不一致がある。OpenAI社は、「十分に構築されたAIシステムは、訓練用のコーパスの何らかの特定の著作物からのデータを、何らかの些末で無い部分について、変更せずに再生することは、一般的に無い」と主張する。かくして、OpenAI社によれば、「侵害は稀な偶発的な帰結」となる。対照的に、Getty Images社は、訴訟において、「Stable Diffusion社が、Getty Images社のものに高度に類似する及びその二次的著作物である画像を、度々作成している」と主張している。ある調査では、Stable Diffusionの作成した少数の画像(2%未満)において「多大な量の複製行為」があったことが認められているが、しかし、著作者等は、彼らの方法は、複写・複製行為の「真の比率を過少評価する傾向がある」と主張している。
2種類のAI出力が、特別の懸念を提起しているようである。第一に、いくつかのAIプログラムが、既存の架空のキャラクターに係わる作品を作成する際に利用されていることがある。これらの作品は、キャラクターが、それ自体として及びそれ自体が、ときとして著作権保護の享受対象である限り、著作権侵害のリスクを高めることになる。第二に、いくつかのAIプログラムでは、特定のアーティスト又は文学作品の「スタイルで」作成するよう求めるプロンプトに直面することがある。もっとも-上述のとおり、いくつかのAIプログラムでは、このようなプロンプトを「拒絶」するように、いまや設計されているようである。これらの出力は、著作権法が、あるアーティストの全体的なスタイルではなく、特定の著作物を複製することを、一般的には禁じていることから、必ずしも権利侵害とはならない。例えば、AI生成歌曲である「Hearton My Sleeve」に関して、ある論者は、いくつかの州のパブリシティ保護法上の問題を生じさせるかもしれないが、Drakeの声の真似は、著作権法に違反しないように思われるとの見解を述べている。それにもかかわらず、いく人かのアーティストは、生成AIプログラムが、彼らのスタイルをコピーする作品を大量生産できる特別な能力を有していることを懸念している。例えば、Stable Diffusion社に対するクラスアクション訴訟において、原告等は、人間のアーティストで他のアーティストのスタイルを真似ることができる人はほとんどいない一方で、「AI画像製品が他のアーティストのスタイルを容易に文字どおり真似る」と主張している。
最後に残る問題は、生成AIの出力が、既存の著作物の著作権を侵害した場合に、誰が責任を負うのか(又は負うべきなのか)という問題である。現時点での学説は、AIのユーザーとAI会社の両者が責任を負わされる可能性があるというものである。例えば、ユーザーは、侵害について直接に責任を負う一方で、AI会社は、被告には「侵害行為を監督する権利と能力」があり且つ「かかる行為から直接の金銭的な利益」を上げていた場合に、その被告に適用される「代位侵害責任」の法理にもとづき、責任を問われる可能性がある。例えば、Stable Diffusion社に対するクラスアクション訴訟では、被告のAI会社は著作権侵害について代位責任を負うと主張されている。AIプログラムの問題を複雑化している一つの要因は、ユーザーのプロンプトに対応してコピーされた著作物をユーザーは意識していない可能性があること—又はアクセスしていないこと-である。現在の法理論では、これは、ユーザーに著作権侵害の責任を負わせられるか否かを分析するにあたっての困難な問題を提起している。
連邦議会のための考察
9
米国連邦議会は、生成AIによって提起された著作権法上の問題のいくつかが、米国著作権法又はその他の立法の改正を要求するのではないかを考察することを望むかもしれない。米国連邦議会は、例えば、AI生成作品が著作権法により保護可能か否か、誰がかかる著作物の著作者と考えられるべきか、又は生成AIプログラムの訓練プロセスは、どんなときにフェアユースと見なされるかを明確化する立法を考慮したいと望むかもしれない。裁判所と米国著作権局には、これらの争点に対処するための機会がほとんど無かったことを前提とすると、米国連邦議会は、暫時傍観するアプローチを採用したいと望むかもしれない、裁判所が生成AIに関わる事案を取り扱う経験を積むにつれて、裁判所は、裁判所の法廷意見を通じて、この分野におけるより優れたガイダンスと予見可能性を提供できるようになるかもしれない。上記に要約したような、この分野における初期の事件の帰結に基づくと、米国連邦議会は、立法措置が必要な田舎を再度評価し直すかもしれない。